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YOON x 庄司夏子 対談 : アートと食、ファッションの出逢い

AMBUSH® デザイナー・ YOON と、数々の賞に輝くシェフ、庄司夏子。革新と美の本質、そして、この一瞬を生きる現在性という視点から、ファッション、アート、美食が織りなす共通点を探る。スターシェフと著名ファッションデザイナーの出逢いが生み出す対話とは。

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モノトーンの外観、窓から望む庭はアートの展示場所でもある。自然そのものが古い季節を脱ぎ捨てて新しい季節をまとうように、シーズン毎に常にアップデートされるしつらいは、店そのものが変化してゆく生き物のようだ。
アジアのベストレストラン50でアジアのベストペストリーシェフに選ばれた庄司夏子シェフが率いるレストランétéに、鮮やかなピンクとライムグリーンのnikeとのコラボレーションセットアップに身を包んだYOONが軽やかに降り立つ。庄司は、YOONのために準備した、厨房でできたばかりの旬の白桃のタルトを手に出迎える。魅惑的な白桃の自然な色調のグラデーションが生かされたタルトは、白桃本来のみずみずしさが、今目覚めたかのように香り立つ。
YOONと庄司シェフ、ファッションと美食の世界で、革新的な美を探究し、時代を切り拓く2つの才能が織りなす対話。イノベーションと、この一瞬を生きる現在性について模索する。

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庄司: YOONさんの作品、どれも脳味噌にガツンとくるインパクトがあって、唯一無二のオリジナリティがあって大好きで。インスピレーションの源は何か、ずっとお聞きしてみたかったです。
YOON:自然からインスピレーションを受けることが多いかな。例えば、飼っている猫。ロシアンブルーっていう品種で、シルバーグレーの毛に明るいライムグリーンの目。自然の色あわせの完璧な美しさに感動する。それまでグレーはあまり好きな色じゃなかったけれど、好きになった。自然って不思議。自然を見つめると、答えは全部その中にある。
庄司:自然の色合わせの驚き、私もです。つもケーキにマッチする色の生花の薔薇をつけるのだけれど、この白桃のケーキにぴったりの、白くて、縁だけがピンクの薔薇があって。どうやったらこんな自然なグラデーションが生まれるんだろう、と感動したりします。
YOON:そうそう。あと、最近は、カメラにハマってる。世の中、本質的な意味で新しいものはないと思う。それに、キャリアを積んでくると、ある意味仕事の公式が見えてくる。それでも、どうやって新しく表現するかを常に考えていかないと。そのためには価値観をオープンにして、物事の新しさを再発見する視点が必要で、私にとってはそれがカメラ。20年住んでいる渋谷も、カメラのファインダーを通すと、なぜか新鮮に見えてくる。色のパレットとして不思議だなと思うもの、自分の中で楽しいと思うものを、「脳の筋トレ」みたいに撮影してる。誰に見せるわけでもなく、自分のコレクションとしてね。そこからインスピレーションを得ることも多い。

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庄司:私の場合は、何年も行ってないところに行くことです。最近お客さんに勧められて水族館に行ってみたら、普段と全く違う感動があって。ラッコが貝を割るのを見ながら、こういう、普段使わない部分の脳を刺激して感動を与える料理とはどんなものだろう、と考えて今年は実現できるかわからないけれど、étéで「ビーチレストラン」をやってみたい。ドレスコードはアロハか水着、店内に砂を敷き詰めて、お客さんは裸足で食事を楽しむ、という新しい体験を提供したいです。もちろん、ファッションからアイデアをもらうことも。この間AMBUSH®のお店に行ったら置いてあった、スタンレーとのコラボの「フラスコ」(ウィスキーなどを入れるポケットサイズの容器)カッコ良かったです。ああいう遊び心大好きで、シャンパンを入れたらいいかも、なんて考えたらすごく楽しくなりました。
YOON:あれね、自分でもテキーラ入れて持ち歩いてて、もしかして一番自分が使ってるんじゃないか、って思うくらい愛用している(笑)売れるか、という視点もビジネスである以上重要ではあるけれど、クリエイティブでい続けるためには、半分冗談みたいなものでも、ワクワクするから作っちゃうというのも大事。まぁ、そんなに大勢の人が買うわけじゃないかもしれないけれど(笑)
庄司:ワクワクはとても大切な要素。étéでも、アーティストとのコラボのケーキも作りますが、別の世界のエッセンスが入ることで、これまで毎日作ってきたケーキが自分自身も見たことのないようなものに変化していくドキドキ感がやめられないです。

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YOON:デザインって、ちゃんとマーケティングして「売れる方程式」に従ったものを作っているところって多いと思う。でも、個人的には、マーケティングではなくて、人が気持ちで作っているものにキュンとくる。音楽も結局、メロディラインのしっかりした、昔の音楽を聞いたりしていて。
庄司:物づくりをしているからこそ、誰かが物に込めた思いをより感じるのかもしれませんね。私も、オートクチュールの手作業にインスピレーションを受けますし、料理作りの哲学と重なるところも大きいです。農家さんが頑張って育てあげた食材が私たちの手で料理となり、最終的に食べた人の血となり肉となる、そのサイクル自体が美しいと思います。服も同じ、材料を作る人がいて、職人技で仕上げる人がいる。そんな「命の塊」である服をきれいに表したいと思って着ています。
YOON:私たちの仕事って、命の循環と直結しているのかも知れないね。クリエイションって、常に前よりも良いものを、と考えていれば、自然に次のステップにつながって新しいものが生まれてくるから、なんだか生き物みたい、と思う。それに、楽しく、大事に作ったものは相手にも伝わるから、自分が作るものから、ポジティブなエネルギーを受け取ってもらいたいな、といつも考えている。クリエイションという生き物を通して、エネルギーが循環しているというか。

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庄司:生き物みたい、って面白い。ポジティブなエネルギー、大事だなと思いつつ、私、実は機嫌がいい時ってそんなに多くないです。例えば、自分がこういうものを作りたい、と情熱を燃やしているのに、取引先にあっさり「できない」、と言われると腹がたったりします。でも、そんな気持ち全てが美しい、って感じていて。一つのものにかける、熱量の塊が料理だと思うから、マイナスの感情も、生命を感じて美しいな、と思うんです。
YOON:私も、イライラすること、しょっちゅうある(笑)でも、それはもう合理的に一つずつ原因を考えて、解決していくしかない。自分の人生って、大きな目標に向けて、高速道路を走っているみたいに感じていて、本来のスピードを邪魔されると腹が立ったりする。大きな目標、と言っても、現実主義者なので、「世界一のデザイナーになりたい」とか、そういう夢じゃない。特に、これからは先の予想がつかない時代。一つの理想にフィックスする必要はないとも思うようになってきた。
庄司:私は、結構具体的な目標があります。アジアのベストペストリーシェフの受賞のように、庄司夏子を一言で表現して世界とつながれる「パスポート」を増やしたいです。このパスポートがあってこそ、その次のステージにいける気がして。とはいえ、お客様を良い料理でもてなすことが一番大切。このコロナ禍で、人と人のつながりがより重要になってきて、私の料理も、お客様に合わせて、よりオートクチュール化してきました。なにかコロナ禍での気づきはありましたか?

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YOON:コントロールできないことにエネルギーをかける必要はない、ということかな。ジュエリーなら、型をとって、それが0.5ミリでもずれると合わないわけで、元々逆算して考える方だった。でもコロナ禍で、ちゃんと計画立てていても、思う通りにいかないと気づいて、目の前にある一つ一つの仕事、「現在」により集中するようになった。「過去の自分よりも良い仕事をしよう」という現在を着実に積み重ねていけば、振り返った時に、バラバラだった点がつながって線になるように、自分の歩んできた道筋が見えてくるのだと思う。
庄司:そう聞くとなんだかホッとします。 10年後の目標は、と聞かれたらいつも具体的に答えますけど、本当に実現できるか、不安になることもあります。でも、焦らずに、目の前のことをきちんとやっていけば、その道につながっていく、ということですね。
YOON:そう。だって、もしかしたら突然明日死んじゃうかも知れないものね。未来に縛られず、目の前のことに集中することで、自分の「現在」がより自由になる、それは、ある意味コロナ禍が教えてくれたことだなぁと思う。

大体、ファッションがあるのも、美食を楽しむのも人間だけ。それで美しさを感じたり、伝えたり、大事にする、って人間にしかできないし、こうして好きなことを仕事にできているって、恵まれているな、って。まあ、宇宙は広いから「人間しか」なんて言い切れないけど(笑)

Text: Kyoko Nakayama

Images: Houmi Sakata

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