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永遠の創造: エルンスト・ハースの写真術

オーストリア系アメリカ人の写真家であり、フォトジャーナリストのエルンスト・ハースは1つの表現手段に固執しつつも、そのスタイルは実に多様であった。抽象技法、モーションブラー、そして世界のスタンダードが白黒であった時に鮮やかな色彩で実験的に撮影した事でその名を馳せた。ハースの先駆者精神と独自の技法ゆえに、彼の作品はカテゴライズしにくく、本質的な人間性の感情から宇宙の誕生に至るまでの全てを包括している。

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Surtsey Volcano, Iceland (1965) ‘The Creation’ Ernst Haas Estate / Getty images

白黒写真と色彩豊かな抽象写真の両方を通し、写真家エルンスト・ハースはその先駆的なアプローチと自身が選んだ表現手法を極めたことにより国際的な著名人となった。1921年にオーストリアのウィーンで生まれたハースは、父が他界した1940年になって初めて写真と出会った。それは家族の古いネガを現像すべく暗室に入った時のことだった。しかし、この出来事がハースの写真に対する一生に渡る興味と40年間のキャリアの火付け役となった:第二次世界大戦直後のヨーロッパの出来事を扱った写真報道に始まり、特に「天地創造」の様な実験的な画像が続くのだった。

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Aerial Flamingos, Kenya (1970) ‘The Creation’ Ernst Haas Estate / Getty images
 

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Great Sand Dunes, Colorado, USA (1978) ‘The Creation’ Ernst Haas Estate / Getty images

ハースが1947年にファッション撮影のためにロケハンをしていた時、捕虜達が電車の駅に到着するところに居合わせた。彼らが下車し始めるやいなやハースは撮影を始めた。ハースの本質的かつ接写された写真は迎えに来た者と、到着した者両者が行方不明の親族を探す際の期待と悲しみを見事に描写した。彼は現像した写真をビジュアルエッセーにまとめ、それがライフマガジンの目に留まった。当時アメリカで最大の影響力を誇っていた写真中心の出版媒体のうちの1つだ。ライフとドイツ語版のホイテはハースの「ホームカミング」という名で知られるようになったシリーズを出版した。「ホームカミング」はハースのキャリアにおいて転機となった。エッセーの出版に続き、ハースは2つのオファーを受けた:1つは写真家としてライフの社員となることと、もう1つは戦場カメラマンのロバートキャパから当時はまだ設立2年目で、現在では写真家にとって格式の高い国際共同組織のマグナム・フォトへの加入勧誘だった。DIYかつ反骨精神を胸に秘めたハースはパリへ渡り、マグナム初の中途メンバーとなった。ライフでのポストを辞退した時、ハースはこう記した。「私は自由でいたい。私の考えを実行に移すためにね...私が自分自身に課すような課題をくれる編集者はそれほど世の中にいないと思う。」

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Black Wave (1966) ‘The Creation’ Ernst Haas Estate / Getty images
 

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Drops in Coral (1963) ‘The Creation’ Ernst Haas Estate / Getty images

 

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c.1960s, ‘The Creation’ Ernst Haas Estate / Getty images

 

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1968, ‘The Creation’ Ernst Haas Estate / Getty images

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Kenya (1970) ‘The Creation’ Ernst Haas Estate / Getty images

確かに、他の編集者が浅い被写界深度やセレクティブフォーカスやモーションブラーの実験をハースに課したとは思えない。これらの撮影技術は現在では彼の芸術スタイルのトレードマークとみなされている。例えば1956年撮影のLa Suerte De Capaを見てほしい。スペインのパンプローナで撮影されたこの写真は牛と闘牛士との決戦を描写している。しかし、鮮明な光景により何が起きているのかを正確に表すのではなく、ハースはシャッタースピードを遅らせ、ぼやけた写真を撮ることにより闘牛の暴力をまるで夢のようなファンタジーに変えたのだ。その様な手法でハースは「ものを、それそのものから自身が望むものへと」変えようとした。抽象の概念を別次元へと昇華させるべく、ハースは「天地創造」シリーズに着手した。同シリーズで彼は地球上の創造を可視化しようとした。様々な宗教上の書物にそれについての記載があるが、ハースが重要視したのはキリスト教の旧約聖書だった。1971年に出版された作品集には世界中で撮影された106枚のカラー写真が収録された。灼熱の溶岩がアイスランドの火山から噴火する写真; アワビの貝の内側が玉虫色の風景に見える接写画; 暗い背景に浮き出る数々の抽象的なパステルピクセルと化したフラミンゴの群れの引きの空中写真。「天地創造」そのもののコンセプト同様、これらの写真は抽象的かつ具体的である: 私達は何を鑑賞しているか理解しているが、その存在意義もしくは、少なくとも一般的なものの見方を自分自身に問うことになる。

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Galapagos (1969) ‘The Creation’ Ernst Haas Estate / Getty images
 

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1982, ‘The Creation’ Ernst Haas Estate / Getty images

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Kenya (1970) ‘The Creation’ Ernst Haas Estate / Getty images

「天地創造」に収録された初期の作品、闘牛の写真、モーション研究の数々、そしてニューヨークのフォトエッセー等がMoMAが1962年に開催したソロアーティストとしては初めてのカラー写真展を埋め尽くした。この多岐に渡る展覧会がハースが1986年に他界するまで積み重ねることとなる評価や名声を確固たるものにし、彼のカラー写真への信念は今でも、新たな「ものの見方の哲学」として根づいている。撮影されてから何十年も経ったハースの写真は今でも見る者に感嘆の念を吹き込む; それらの作品は私たちの日常の解釈を見直させ、私たちを立ち止まらせ、世界を新たな視点で見るように駆り立てるのだ。

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Red rose (1970) ‘The Creation’ Ernst Haas Estate / Getty images

Text: Emily McDermott

Images: ©️ Ernst Haas Estate / Getty images

Translated by: Sho Mitsui

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