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ゆがみ、抽象、超現実。

直感とロジカルなアイデアのはざまから生み出すグラフィックデザイナー・萩原卓哉 / Hagihara Takuya

毎日アウトプットされるアートピース。常にアップデートされていくそれらを生み出し続けるひとりのグラフィックデザイナー・萩原卓哉 / Hagihara Takuya。過去を振り返らず、常に未来を見て更新し続ける制作スタイルについて語ってくれた。

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毎日欠かさずソーシャルメディア上に1つずつアップロードされる作品群。すべての作品が違った表情を見せているが、制作しているアーティストは同一人物、萩原卓哉 / Hagihara Takuyaだ。
大学で電子工学を専攻したのち、グラフィックデザイナーの道へと進んだ彼の制作の積み重ねは、BOTTEGA VENETA表参道店ディスプレイからAMBUSH® WORKSHOP 2022 S/S コレクションでのコラボレーションに至るまで着実に活動を広げている。

それでも欠かさずにアップロードされるグラフィックデザイン作品は今や数えきれないほどに膨大だが、グラフィックデザイナーの肩書を持ちはじめたきっかけを問うと、意外な答えが返ってきた。

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「当時の私も多くの若者が抱えるであろう漠然とした不満から向かう制作表現への衝動があったのだと思います。始めるにあたっては、他のジャンルのように設備やスペース、人員などの条件も必要なく、ゼロから様々なものが生み出せる、自由度の高い表現手法だという勘違いを持ったまま続けている感があります」。
奇しくも「勘違い」を起点に同じ身体から生まれ続ける作品を「無意識的に、自分の経験全てを混ぜ合わせた結果の産物だという感覚があります。ですので、直感的に造ったものでも、あとで見返すとロジカルなアイデアの反映を感じる時もあったり、その逆も然り」と語る。

まさにアートピースの魅力とは、どんなに時代が変化しても完成した作品自体は不変であるにも関わらず、鑑賞する側の心境の変化によって感じ方が何度でも多様に変わり、それらが再び創作の刺激へと循環するということだろう。

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表現の世界とは、一見接点がなさそうな大学時代の専攻との共通点を問うと「ラボで実験を繰り返し行っているような感覚だけは、エンジニアリングと共通するものなのかもしれません」と話す。その「実験」に試みる彼の好奇心は、日々更新される作品の制作において常に新しい手法にチャレンジする姿に現れているのだ。
そんな常にアップデートされていく作品をひとつに留めるように言語化することはナンセンスだが、インタビューで萩原の制作に対しての向き合い方を垣間見ることができた。制作から今後チャレンジしたいことまで、そして 2018年に離れた東京の奇妙な景色についても話を伺った。

 

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毎日 投稿される作品群から一貫して具体的なモチーフや色彩のバグのようなものを感じるのですが、新しい手法を取り入れていく中で、初期からコアにしている作品コンセプトを教えてください。
私自身は、毎回、他者の既存の作品や、過去の自分の作品の系譜を踏まない、今までにない作品づくりに挑んでいきたいと気持ちがあります。ですので、自分の作品の中に、一貫したものがあると受け止められる現実は、悲しいことではあります。ただ、新しいアイデアもマイナーチェンジの積み重ねによってでしか、私自身の場合は現れないことも以前知る機会がありました。

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萩原さんにとって、「オリジナリティ」とは一体どのようなものでしょうか ?
「『オリジナリティ』を持った創作物が、この世界に存在するかもしれない」というのが、頭のどこかにあり続けていて、何か造ったあと、「『オリジナリティ』を持ったものが造れたかもしれない」とふわっと2,30秒思えた事が、次への創作動機になっている気がします。そして自然界に目を向けてみると、「オリジナリティ」で溢れかえっていることに気付きます。
以前インタビューで、苦手な手法や新しい手法を積極的に取り入れていると話されていましたが、ここ最近制作においてチャレンジしたことはありますか?
ビジュアルから、何か違和感や新しい感覚を味わってもらえることが、真意の一つなので、手法などを知っていただく必要はありません。あくまで制作者サイドの問題です。内緒です: )

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2018年に東京を離れて活動してらっしゃいますが、目まぐるしい新陳代謝によって景色を変える東京の美しさと、表裏一体で不気味さは一体どのようなものでしたか?
東京は絶妙に居心地が悪い街です。その、秩序を持ったケオティックな景色に美しさを感じることは、人間の突飛なものを好む趣向が生んだ、好奇心でしかないように思います。

15年近く住んでいた土地ですが、2018年の初めに去って以来、まだ訪れることが出来ていません。さらに風変わりさを増していることを期待しています

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これからチャレンジしていきたい制作ことを教えてください。
所詮、自分の作っているものは、人間が人間に向かって、作っているに過ぎないので、ずいぶん前からではありますが、身体やその感覚を最大限に使った表現方法には興味があったり、試したりはしています。あと今まで嫌いだったものを試してみることは、どの方面に対しても面白いことだし、動物や植物に向かって、何かつくることも何か発見があるのかなと、この質問に答えている最中に思いました。毎日意見が全然違うものに変わるので、具体的には断定できないのですが。

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Text: Yoshiko Kurata

Artist: Takuya Hagihara

 

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